この胸が痛むのは
「どうしよう、嬉しくて……どうしよう?
 恋の遍歴、完結したね!」

「本当にね、終わっちゃった、完結しちゃった!
 でも、まだ父さんや母さんには言ってないの。
 奥様にも言わないでね? フォード様にならいいよ!」


アシュフォード殿下のお名前が出て……
幸せなリーエの前では顔に出さない様に気をつけました。
こちらに来てから、まだ殿下とクラリスの事、
私が行った呪いの事、殿下が私を姉の代わりに
しようとしている事は、リーエには話せていなかったのです。
入学の為の勉強が忙しいからと、先延ばしにしていたのです。


今日は話せない。
元々綺麗なリーエは幸せそうに微笑んで、とても美しく。
その幸せや美しさを損ねてしまうようで、今日は話せないと思いました。
また、折を見て……話そうと。
こうして私はまた先延ばしにする口実を見つけてしまいました。


 ◇◇◇


7月に行われる王立歌劇場小ホールの演劇部の
発表を祖母と観に行く事になりました。
1年生ながら出演されるイルナ様は、クラスで
仲良くさせていただいていますし、校内で出会う演劇部の先輩方もお誘いくださっていたからです。
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