この胸が痛むのは
夫人はあくまでも、そうさせたクラリスに責任があったように話した。
アグネスから罪悪感を失くす為だ。

俺も聞きたかった。
俺が好きなのはアグネスだけで、パートナーに
したことから生じた誤解はブレスレットの件も
含めてわかってくれていた筈だ。


「殿下がクラリスに愛していると言っていたの」

信じられない言葉に握った手に思わず力が入り、アグネスがぶるっと身をすくませた。
夫人が俺を睨む。
俺は首を振った。
あり得ない、クラリスに愛してるなんて言った事は……

あった、あの温室でだ。
あれをアグネスが聞いていた……


「それは誰かから聞いたの?
 それとも自分の耳で聞いたの?」

「温室で聞いたの、トルラキア語で会話をして
いたの。
『私はあなただけを愛しています』
 もう一度と、クラリスに言われて繰り返して。
 ちゃんと言ってとお願いされて、3回仰せに
なっていたのを確かに聞いたの。
 ふたりは笑って……楽しそうだった」


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