この胸が痛むのは
「そうだったわね、リーエの事はあの容姿だから相談室に呼び出す前から知っていたの。
 友人が居ない様子なのが気になって、辞める
理由は苛めかしらと思って」

「リーエは女性からは誤解されやすくて……」

「そうね、恋を繰り返す女性はそう見られやすい。
 この男性は駄目だと思うと、見限るのが早い
のよ」

「……」

「アグネス様はずっと……これからも王弟殿下
だけと決めていらっしゃるの?」


それは賛成するでもなく、責めるでもなく。
とても静かな……
私は同情されているのかもしれない。
ひとりのひとに囚われてしまっている私はアーグネシュ様から哀れに見えているのかもしれません。


「殿下の事は憎いです、だけど愛しています。
 私の心には……殿下しかいないのです」


それは口にせず、心のなかだけで思っていれば
いい事なのに。
もう催眠術にはかかっていないのに。


ここは裕福な伯爵邸で。
選び抜かれた美しい調度品に囲まれて。
美味しいお茶と手の込んだお菓子。
ここは学園の相談室ではないのに。

『話すだけで救われる』

そう言った顔も知らない平民の女性達の言い分が少しだけわかった気が致しました。

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