この胸が痛むのは
伝説伝承と分類されている書架に並べられた本にも、吸血鬼や悪魔、妖精の章に比べて内容的に薄かったし、死人還りを行うにはどうしたらいいのかと、具体的な記述は載っていませんでした。


「しびとがえり、ね……聞いた事あるかも知れないけど。
 やっぱりわかんないなぁ」

頼りなるのはリーエだけだと、彼女に聞いたのに。
『そういう系統はよく知らないわ』と言われてしまいました。
恋のおまじないに詳しい彼女なら、知っているだろうと思っていたのに。


「どうしたの、何でそんなのを知りたいの?」

尋ねられましたが、もちろん正直に言うつもりはありません。


「以前話したでしょう?バロウズにいた先生。
 私も同じ様にトルラキアの伝承民俗学を学びたいと思ってて……
 ヴァンパイアは王国の成り立ちに絡めて皆様
よく研究されているから、違うものをレポート
にしたくて」

「じゃあ、その先生、こっちに帰ってきている
なら聞きに行けば?」

「……先生はストロノーヴァだよ?」

「あぁ、そうだね、あの勇猛公のひとだったね。
 ちょっと、簡単には聞きに行けないね……
 そうだなぁ」

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