この胸が痛むのは
夜会の特別招待客には、隣国の王女も入っていて、それは向こうからの申し出だと言う。


王女とは一昨年が初顔合わせだった。
親しくもないのに、やって来ると言うことは……
レイに雑談混じりに聞いてみる。


「どんな裏があると思う?」

「いや、単純にアシュの胡散臭くて、心がこもっていない笑顔にやられたんじゃないの?」

俺は学園の女子達には疲れるので笑わないが、
王女に対しては、王族義務として愛想良くして
いたのだ。

グレゴリーがそれとなく探りを入れると、
国王陛下は
『隣へ婿入りもいいけど』らしいが、王太子が
俺には国内の貴族令嬢を娶わせたいと言っているらしい。
王妃陛下と王太子は、王弟も公爵も同腹で揃えたい。
兄弟では、末のエドアルドだけが年若い側妃の子供だ。

隣国の王女は子供のいない叔父公爵の養女になる予定で、婿入りすればあちらに行っても公爵だが、国政に参加させて貰えない。
なら、俺もこちらで兄達の手伝いをしたい。


大人になると言うことは、否応なしに面倒事にも巻き込まれる。
これまで比較的平和だった俺の周囲が、変わっていきそうな気がした。
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