この胸が痛むのは
「ふたりの命日には休みを取りましたけど、誕生日ですからね。
 朝から仕事に出ていて、夜は夕食後に籠っていたみたいなので、父は知りません。
 家令は父には話せないと、使用人には箝口令をひいて、私にだけ」


最近は侯爵も昔の思い出話などなさるが、一昨年の命日辺りでは、恐らくまだ沈んでおられたので、家令がアグネスの事を報告出来なかったのは無理もないな。

初めて知った話だが、1日に3回も?
2時間も座っていただけのか、何かをしていたのか? 
次のアグネスの帰国は今年の秋。
命日とクラリスの誕生日に合わせた更新。
今年も同じ様に、姉の部屋に籠るのか?

今年も同じ行動を取るのか、まだわからない。
一昨年だけの話の可能性の方が高い。
気になるが、俺は今年の秋は帝国へ行く事が決定されている。

侯爵邸内での話だから、アグネスに身体的な危険は無いだろうが……


「今年も同じことをしたら、直ぐに連絡をしてくれ、と頼んでいます」

秋にはシュルトザルツで、プレストンに会うことも多いだろう。
その時には、ふたりで話して。

プレストンが妹に、その理由を尋ねていない様に。
俺もまた、アグネスにはまだ、何も聞くことは出来なかった。

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