この胸が痛むのは
「……罪悪感なんて、私はそんなつもりはないです」

「どうしてこんな話をしているのかと、自分でも呆れるよ。
 人の事には立ち入らないと決めていたのに。
 しかし誰も言わないから、僕が言おう。
 君はもう子供じゃないんだから、周囲に甘えるのはもうやめたら?」


君は反論をしないと言われたので、黙っていたらいけないのだと思いました。
何か、何か言わないと、ますます先生に嫌われてしまう。
でも、甘えていると、言われて。
もう子供じゃないんだからと、言われても。
何も先生に言い返せない。


「暗い方にばかり目を向けて、囚われ続けては
いけない。
 つけこまれて戻ってこられなくなる。
 明るいこっちに帰ってきなさい」


先生の仰られた『こっちに』の意味がわからないのです。
『帰る』? どこに帰れと、仰るのでしょうか?


「……僕の言葉が君に届くことを、願うよ」

それだけ仰せになると、ストロノーヴァ先生は
背中を向けて、軽く手を振りながら帰って行かれました。
今なら、まだ間に合う。
去っていく先生の背中を、目で追いながらそう思いました。


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