この胸が痛むのは
依り童の方が成功率が高いなら、アグネスはこちらを選ぶだろう。
それも自分を、姉に似ている自分を依り童とする筈だ。
無意識に暗示を自分にかける彼女は危う過ぎる。


「通常はかける人物と依り童の、最低ふたりは必要です。
 アグネス嬢には、協力者がいそうですか?」

バロウズにそれ程親しい人物が居ただろうか。
余程信頼出来て、口が硬い人物じゃないと無理だ。


「悪手でしたよ、責めるのではなく、手伝うと言えばよかった。
 アグネス嬢は私に手助けは頼まないし、私から言っても邪魔をされるだろうと、用心するだけ……」

後悔したような先生に俺は言ってみた。


「私が手伝うと、言ってみるのはどうでしょうか?」

アグネスの全てを受け入れると、いつだったか先生に話した。
それを証明する時が来たと、思った。



先生は頭を振る。

『ご自分の立場をお分かりでしょう?』と。
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