この胸が痛むのは
仕方なく、まぁ、アグネスの話なのだから仕方
なく、と言うのはあれだが。
不機嫌モード全開の侯爵に言ったのだ。

随分と先の話になるが、貴方の下のご令嬢を娶りたいのだ、と。
それを聞いても、侯爵は何も言わない。
……それで押し黙る侯爵を説得しようと、俺は
一心不乱に言い募った。


「これは一時の感情で、言っているのではない。
 アライアも賛成していて、早めに囲い込め、と」

「……囲い込み、と仰せになりましたかな?」

しまった! 目の前にいるのは父親だぞ!
つい、言ってしまった、では済まないぞ。


「まだ、10歳にもなっていないアグネスを囲い込んで、殿下とマーシャル伯爵夫人はどうなさりたいので?」

「か、囲い込みとは、失礼な物言いをして申し訳ない。
 将来の私の婚約者として周知させる、かな~」

「……そして殿下の婚約者教育を施すとでも言うのですかな?
 バージニア王女殿下の様な王家の淑女に育てる、と?」
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