この胸が痛むのは
何度か好きだと告白されて。
すげない態度を取っても、自由席の授業でいつも最前列に座っていた。

昼休みに図書室で時間を潰していると、顔を出して照れていた。
何か話したいのかと身構えても、彼女も本を取り出してきて。
会話を交わすより、ただ隣に座り、お互いに本を読んでいる時間の方が長かった。



その彼女が、亡くなった?
どうして亡くなったのかと聞けない自分の勇気の無さに、自分でも驚いた。


「……君にお悔やみを、お悔やみを言わないと
いけないのだけれど。
 申し訳ないけれど、少し……後にしてもいい
かな」


それだけしか、言えなかった。
声が震えてしまっていたかもしれない。

こんなに彼女が死んだことに衝撃を受けるなんて。
病気か、事故か、頼むから自殺ではないと、言ってくれ。
だが、確認するのが怖くて。


ミハンはアグネスに背を向けた。
自分の態度を、彼女は不審に思っただろう。

姉とは一体、どんな関係なんだと。

アドリアナともクラリスとも、何の関係も持っていなかった。


自分を責めるアドリアナの家族の声が、耳にこだまする。

アグネスも、そんな風に自分を睨み付けて、大声で責めるのだろうか。
だから、俺に会いたいと。


『姉はお前のせいで死んだんだ!』と。


もうデビュタント会場には戻れなくて。
ミハンはそっと公爵家の馬車を呼んで。
一旦先に自分だけを送ってほしいと、頼んだ。
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