この胸が痛むのは
母国でも王女はもて余されている。
父の国王は病床に伏し、実質国政を動かしているのは王太子だ。 
クジラはその王太子から疎んじられている、という噂だ。


こんな風に俺が夜会の警備や諸々について関わるのを、最初アライアは止めた。
『その様な事で殿下のお手を煩わせるわけには参りません』、だったか。

グレゴリーも会場警備の配置を知ろうとする俺を押し止めようとした。
『何もご心配なさらず、万全を期しております』、そう言って。

『護られる俺が、護る人間が何処にいるのかわからなくて邪魔をしない為だ』と言うと、ふたりは変な顔をした。

……そう言う事だ。
俺から言わない限り。

黙って護られていればいい、か、?
これからはそうはいかないぞ、と改めて思う。

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