この胸が痛むのは
部屋には両陛下の他にも、王太子夫妻、第2王子と婚約者、第1王女に第4王子、側妃であるその母。
いわゆる王家オールスターズが顔を揃えていたのだ。
それでも『友人ですから』を言い続けた俺達に。


王妃陛下は女官に持ってこさせたブレスレットをクラリスに差し出した。
白金に輝く細いプラチナに紫の小さな石がいくつか付いていて。
これは有名な『独占欲から瞳の色を身に付けさせる』じゃないのか?


どうする?どうする?
クラリスの目が俺に問いかける。
両親や兄達はともかく。
取り巻きのメスガキ達と噂話をするのが趣味で、ものすごい目で睨んでる妹。
反対に瞳をキラキラさせて、あちらこちらで受ける為なら有ること無いこと喋りまくる幼い弟。
味方なのか敵なのか、何考えてるかわからない
側妃、のいる中で。
クラリスお得意の『真実ではありません』やって貰う?
どうする?


……どうしたらいいのか即決を出来なかった俺は、それを受け取ってクラリスの手首に巻いた。
首飾りのようにパッと目立つやつじゃなくて、良かった。
ブレスレットなら、気付かないヤツも多いはず。
……そう思うしかなかった。


『馬鹿』声に出さず、クラリスの口が動いていた。
その通り。
読唇術はわからないけど、俺は馬鹿、それは正解だ。
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