この胸が痛むのは
考えていることを言い当てられるのは気分が良くない。
伝家の宝刀『考えている時は悟られないように、微笑んでおけ』の精度をもっと高めねば。


2曲目も終わり、レイと合流する。
コイツは誰も誘わず、踊らなかった。
クラリスに一途な親友に、いつかはストロノーヴァの事を話さなきゃな、と思う。
もちろんクラリスに承諾を得てからになるが。


2曲続けてだったので、汗をかき息を切らした
俺達にレイが飲み物を差し出してくれる。
何人かが一息ついた俺達の回りを取り囲んで話しかけてくるが、いつもの王子スマイルでやり過ごして、護衛に合図をして3人でバルコニーへ移動する。


「クジラがまだ来てない。
 母上が部屋を見に行ってる」

どうなっているんだ!
仲の良さアピールの為に2曲も踊ったのに!
見せつけようとした肝心のクジラはそれを見ていない。
王女が来たからと言って、もう踊れないぞ。
こんなことなら続けて踊らず、前半1曲、後半1曲と分ければ良かった。
3曲踊ったら、クラリスは本気の相手だと周知されてしまう。


現実は机上の計画通りにはいかない、を実感する。
王妃陛下といい、クジラ王女といい……
この先どうなるんだと俺は額を押さえた。


その時、会場内で呼び出し係の声が響いた。


「リヨン王国第2王女、フォンティーヌ・ラ・ベルヌ・リヨン殿下!」

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