セメントの海を渡る女
その2
剣崎


「兄貴…!」

「おう、倉橋…、ご苦労だ」

福岡空港に着くと、撲殺人が迎えで待っていた

「小さい車ですいません。中は狭いですが、どうぞ…」

早速、倉橋の運転でミカの元へ向かった

「どうだ、不都合は生じてないか?」

「大丈夫です。ミカって女に接触してるところは、毛唐二人が交代でマメにチェックしてますが、なんか通り一遍ですわ。所詮、アルバイト感覚ってとこなんでしょうな」

「だが、油断はするな。これから俺たちのやろうとしてることは、戦争で言えばスパイの逃亡手引きだ。実際に手招きする俺たちが命がけなのは当然だが、実質的には関西にケンカを売ることに直結する。アメリカも巻き込んでなんだからよう、場合によっちゃあ大事になるやもしれん。覚悟してかからんとな…」

「ええ、わかってます。はは…、やってやりましょうや」

倉橋は張り切ってるな…(苦笑)


...


「…大まかにはこんなところだ。いいか、今回はミカを出国させて終いじゃない。その先も長いってことは忘れるな」

「了解しました。まずはK国で会長の知人に囲ってもらう。そのあとは北東アジアから中近東を巡ってガードをこなせばいいんですね?」

「ああ。人選は組内に限定しないで慎重に決めるが、要はミカが海外で生きていける道筋を立ててやるのがベースになる。今日、彼女に会ったらその辺はよく詰めんとな」

そうさ…、ミカを海外脱出させて、そのあとが重要なんだ

さすがにそれは相和会が全部施せることではないし、決められない

当然ながら、ミカ本人の意思と努力によって、切り開かれるべきものだからな

そして午後、能勢立会いの下、ミカとはその辺を含めしっかりと話し合ったよ





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