逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
 
 誰かと会うのだろうか?
 
「いらっしゃい」

 気軽に挨拶をしたマスターに、純也はよっ! と、手をあげて奥の席に座った。

 向かい側には誰もいない。
 さっき手を振ったのは、マスターにだったのか。

 少しほっとした麗人。


 すると、カランと鈴が鳴り誰かが入って来た。

「あら、貴方が沙原麗人さんなんだ」

 ん? 聞き覚えのある声に、麗人は振り向いた。

 すると、純也の向かい側にやって来たのは彩だった。


 なんで? しかも、純也が僕のふりをして会っているってどうゆう事なんだ?
 あいつは今、彼女と同棲していて九条家にいないけど、萩野さんと知り合いなのか?

 驚いてこそっと様子を見ている麗人。


「ん? あんたが萩野彩さん? 俺に何か用? 」
「ええ、お願いがあってね」

 向かい側に座った彩は気持ち悪い笑みを浮かべた。

「ねぇ、私と付き合ってくれない? 」
「あんたと? なんで俺が? 」
「だって、すごく好みなんだもの。あのとき、ぶつかった瞬間い運命感じたの。私が、沙原コンサルティングに働いている事も偶然じゃないでしょう? 」
「ふーん。でも俺、ニートだけどいいの? 」
「構わないわ、私が食べさせてあげるから。それに、社長の息子でしょう? ニートだって構わないわ」
「そうなんだ。別にいいけど、俺つまんない男だけどいいのか? 」
「そんなことないわ。傍にいてくれるだけで、いいもの」

 純也は呆れたように眉を上げた。

「それならいいけど。でも、初めに言っておくけど」
「え? なに? 」

 じっと真剣な目をして純也は彩を見た。

「俺、起たないけどいいの? 」
「え? 」

 目が点になった彩を、純也はじっと見つめたままだった。

「なんかわかんないけど、俺女の裸見ても奉仕されても起たないんだ。だからEDって言われているんだけど、それでもいいのか? 」
「いいわよ、別にセックスだけが目的じゃないもの」
「あっそ。なら、別にいいけど」

 しめしめと言わないばかりに彩はニコっと笑った。

 セックスなら文彦さんとしたらいいし、起たないならたっぷりと私にお金を貢いでもらえそうだわ。

 彩は腹の中でそう思っていた。

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