逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「事情は分かったが、萩野彩と交際するのは危険だぞ。彼女は、今まで男性社員を狙ってよからぬ噂が立っている」
(分かっているよ。萩野彩が今まで殺害してきた男性は、数多くいる。自分の手を下さないで、自殺に追い込んで殺している。…萩野彩は実の父親も殺している可能性がある。そして、母親も…)
「本当なのか? 」
(ああ、あいつの家は昔からの一軒家だが。キッチンの床下に、収納倉庫があるらしい。父親も母親も、この10数年ずっと家から出たのを見たことが無いと、ご近所からの証言もある。あいつは両親は、海外旅行に行って帰ってこないと言っているらしいが。出国した形跡がないらしい。母方の身内からは、捜索願も出ているようだ。今回のひき逃げ事件が、明るみになれば家宅捜査も入る。そうすれば、床下の収納倉庫も調べられだろう。他にも、萩野彩と半年前まで交際していたと思われる男性が行くへ不明らしいからな)
「そうか…」
(兄貴は何も心配する事はない。だから、自分に正直になれよ。この前さ、萩野彩と待ち合わせしたカフェに兄貴がずっと好きな彼女が一人でいたよ)
「カフェ? 」
純也はフッとため息をついた。
(俺達がよく、父さんと一緒に行っていた昔ながらのカフェだよ。あのカフェは、あまり知られていないのに彼女はずっと前から知っているかのようにやって来たよ。嬉しそうにオムライスを食べている姿は、昔の兄貴と重なって見えた。きっと、彼女があのカフェに行ったのは偶然じゃないって俺の勘で感じたけどね)
「…そうか…。安心しろ、もう自分を偽るのはやめた。これ以上、大切な人を傷つけたくはないからな」
(わかった。萩野彩は言わせておけ、ただ、真実だけをハッキリ言えばいいだけだ)
「ああ、そうするよ。有難うな、純也。お前もそろそろ、九条家に戻ってこい。おじさんが、寂しがっているから」
(分かったよ)
電話をきった部長の麗人は、そっと立ち上がった。
時刻を見ると12:20分だった。
あのカフェに行ってみようかな。
そう思った部長の麗人はそのまま歩き出した。