あるホラーな再恋噺
その3




「わかってるから。あなたのことは、全部…。だからいいの。弱い人間なのは、私だって一緒よ。私、マゾヒストなの。性的欲求はフツーじゃないのよ。この年になっても、この性癖は消すことなどできない女だったの」


「!!!」


水島ユキノは一気に告白した。
無論、ノブオに絶句以外の選択肢はなかった。


二人は2Mくらいの間隔を開けて正面を向きあっていた。
互いに目をじっと見つめあって…。


***


「…こんな話、誰にも言ったことなかったわ。いえ、言えないわよ。だから、同じ性癖を持つSの人にはその抑えきれない欲望をかなえてもらって…。今回、中学生の時に好きだった中原君が、のたうちまわるほど苦しんでるのがわかったんだから、私もさらけ出そうと…」


”どうやらオレ、泥酔状態だったから覚えてないが、同窓会の席で彼女に身の上話をしちまったようだ…”


ここで、彼女は勢いよく服を脱ぎだすと、アッという間に全裸となって、ノブオの前に姿勢を正して晒した。


「水原…!」


小柄で華奢なユキノの裸体は正直、貧弱だったが、どこか艶めかしかった。
いや、今現在の中原ノブオにとっては、神々しく見えたかもしれない。


***


「この部屋で、Sの男性からはとても口に出せないくらい恥ずかしい格好をするように命じられたわ。私は顔から火が出るほ恥ずかしくてみじめだったけど、命令に従ったの」


すると水原ユキノはノブオを背にして、彼女が今告白したとおりのカッコを再現した…。


「…」


中学生時代の憧れだった理知に溢れる女性が、今目の前の姿を晒している”彼女”と同一人物だということなど、彼にとってはまさしく”ウソだろ…❓”であったのだが…。
信じられないような眼前の様を凝視する中原ノブオは、人間失格を十分自覚してはいながらも、心臓が高鳴るのをとめられなかった。


***


「ここで私を、”その人”にやられたみたいなことをしてくれる❓ううん…、して欲しい…」


「そんなの無理だって❕オレにできる訳ないだろ、尊敬してたキミに…、そんなコト…」


「カタチだけでいいから…。ほんのカタチだけ…。さあ…」


ノブオは彼女に手取り足取り、それこそレッスンを受けるかのように、文字通りカタチだけ(❓)で”その手”のプレイをなぞった。
室内に置かれた定番の”その手”のグッズをいくつか手に取って…。


ユキノは時たま低い声を漏らしながら、約40分間、元同級生の彼をリードする…。


かくして、44年ぶりに同窓会で再会を果たした男女は、この密室で何ともヘンテコな2次会を過ごすこととなった。

そしてひと通り、極めて初歩コース(❓)のさわりだけの”ソレ”を終えると、二人はベッドの下で互いに優しく抱き合った。
なぜか、ノブオだけ服を着たまま…。
実は、これも彼女からのリクエストだったのだが…。





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