あるホラーな再恋噺
44年目の同窓会②


同窓会は午後2時スタート…、会場は立食形式となっていた。


”立食は好都合だ。席が決まっていたんじゃ、むさくるしい男連中に捕まって、なかなか移動のタイミングが掴みつらいってもんだ…”


死を覚悟した年配男は午後2時20分前には会場へ到着し、もうあからさまに”昔のギャル”しかアタマになかった。


”ほ~~、結構集まってるな。さすがにみんな年とったが、不思議とどんなに変わってもあの年代の同級生となると、よほど接点のなかったヤツをのぞけば名前、すぐわかるもんだな…”


彼はいち早く44年ぶりに見る同窓生の、昔の名前当てに夢中となっていた…。


***


結婚式にもよく使われるというこの会場はフロアも広々としたスペースながら、どこかアットホームな密閉空間を醸し出していた。


”概ね7、80人ってとこかな…。ざっと見た感じじゃあ、女の方が少し多いようだ。ふう…、肝心な4人は来てるかな…”


ノブオの焦点は、早くも”そこ”に集中していた。
彼はさりがなく、6、7個を形成していた女性陣のカタマリを丹念にチェックした。


”いたー‼佐々木康子発見だ。…おお、進藤さんもだ!それに…、あの横顔、あの子じゃないか…⁉あっ、こっち振り向いたゾ❢。わー、ビンゴだろうがー、彼女…。古澤ユカに間違いないって🎵相変わらず背ー、高いわ~”


彼は間違いなく胸をときめかせ、50代後半の、おそらく生理も終わったオバサン3人に、少なくとも性的興奮を感じた。
なにしろ、この男の感覚は男連中の年の取り方と根本的に違う、加齢の絢を捉えずにはいられなかったのだ。


”ヤローどもはオレを含め、だいたいはのっぺりだ。まあ、竹がにょきにょき伸びてるだけって感じで、風情も何もあったもんじゃない。その点、女性たちは年輪を自身に据え付けながら味わい深く年齢を重ねてきたって伝わるよ。まあ、杉の木みたいな…。みんな、なんて神々しいんだ❕その辺の街中歩いてるオバサンとはワケが違うわ、オレの同窓生は…💖”


とは言え、第三者的にはちっともワケは違わなかった。
それは、人生にトンズラする哀れな男のその感性が倒錯していたのか、はたまた、覚醒のなせる業だったのか…。


皮肉にも”その解”はこのあと、ノブオ自身が導くこととなる…。


***


”これで3人揃った…。だが、あの子は来てないのかな❓…水原には何としても会いたかったんだが…”


昨夜、ノブオがオ自称行為のおかずにしたのは、旧姓水原ユキノであった。


”アイツに会いたい。頼む…。来てくれ!”


彼はここに至り、今日の本当の目的を悟ったようだった…。



***



”水原…、お前には本当のオレを見て欲しい。金借りた多くの人に無意識とはいえ嘘八百を口にして…。こんなサイテーオトコだって、知らせたいんだ。他でもないお前だけには…。だから、ココに来い!頼む…”


ノブオは水割りをハイペースで飲み干しながら、彼女との対面を懇待した。
それは願うというより、念じるといった方が正確であった。




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