あるホラーな再恋噺
44年目の同窓会④



それはごく”わずかの瞬間”…、ということだったのだろう…。
彼の瞬きがある瞬間終わると、ほんの数秒前までと周りの女性が入れ替わっていたのだ❣


もっとも既にかなりの酒量を煽り、相当酔っぱらっていたノブオは、”そのせい”だろうと受け入れていたのだが…。
従って、この時点では不可思議の4文字は頭になかった。


”うわー、まず左横、古澤だ~!!”いまだに”女子バレー部風”ショートカットのままか…”


「中原君…、わー、久しぶりどころじゃないねー。あれ以来だもんねー。なつかし~💖」


この子とは小1から6年までずっとクラスが一緒だったのだが、、中学では同じクラスってのは一度もなかった。
ユカという“少女”は何しろ、さっぱりした性格だった。
で…、彼女とは小2のころ、好奇心と悪ノリの延長で、よく男女7、8人が某友人宅で一斉にふとんの中に頭ごと入っては、はしゃぎまわって”触り合い”をする、”布団かぶり”とい淫靡な(?)アソビを興じあった仲であった。


”女子の中には恥じらいと嫌悪を示し、NG出しで見学に回る子もいたけど、古澤はあっけらかんとして、布団の中でこっちのまたぐらを握ってきたりしてたな。オレも彼女にはスカートの中へ手を入れて、くすぐったり(ガキ流の愛撫?)してね。互いにケラケラ笑いながら、悪ふざけしたのをよく覚えてるよ…(しんみり💦)”


ノブオは酔っていながらも、頭の中は走馬灯のように、ほぼ完全な記憶が矢次早でフラッシュバックを繰り返していた。


***


”そんで、実は彼女にはオレ丸裸、視姦されたんだったわ…”


あれも小2くらいであったが、当時自宅に風呂がなかった中原家では、夏になると庭の奥で浴槽状の風呂桶にヤカンで沸かした湯を親が入れてくれ、真昼間の行水タイムを催していたのだ。
青空の下、すっぽんぽんになって…。


***


たまたまその行水開催中、家の前を同級生二人と通りかかった彼女が庭に入り込んできたことがあったのだ。


”アイツ、全裸で屋外入浴中のオレを覗き込んで、ニヤニヤしながら”中原く~ん、裸でなにやってんのー”ときたわ”


その時も他の二人は顔を赤くして”ヤダー”とか言って、目を閉じたりしてたが、古澤ユカだけはしっかり、桶の中に曝された彼の全身を興味深そうに見ていた…。


”コイツとは何の気なしに会って話しても、いつも一緒。終始、気持ちよく接し続けられたよ。だから、サンキュー、同級生ってとこなんだよな、古澤ユカは…”


***


「…中原くん!私、覚えてる?」


古澤ユカの隣からそう声かけしてくれたのは、進藤史子だった。


「ばっちし覚えてるよ、進藤さん…💖」


彼はちょっとしんみりした口調になっていた。
ノブオにとって、彼女には、一生忘れることのできない”恩”を受けていたのだ。
それは小5の時、給食でゲロ吐いちゃった時のこと…。


***


”親しい友達なんかは皆、オエーって感じでスーッと席離れて行っちゃって…。担任の先生も、”しっかり後始末しとくように”ってね。オレは床に飛び散った湯気だつゲロを手でかき集め、洗い場で流していたんだが…。そしたら、進藤さん、保健委員でもないのにオレの”汚物”を手で流すの手伝ってくれたんだよな…”


彼女は洗い場で、”気分良くなった?もう大丈夫?”と、皆の前で醜態をさらししょげている彼にやさしく声をかけた。
ノブオには、その時の彼女が聖母様に見えたようだ😢。


その進藤史子は、いい子ぶりっ子とかってタイプじゃなく、何しろ活発で天真爛漫…、やぼったい感じはあったが、目が大きく愛嬌があってみんなからも好かれている子だった。


”あの時は”助かったー”って気持ちより、何て偉い子なんだ、この女の子はって、唖然としてた記憶がある。とにかく彼女には、幼少期のトラウマにもなりかねない出来事で、人の勇気、親切心という有難さを体感させてもらったんだよな。だから、彼女には文句なく、感謝、感謝という念だよ。その気持ちをずっと心の中にしまっておいた同級生の女子なんだ❣”


明日死ぬ予定のノブオは、彼女たちと接することで、むしろ自分の”無垢な童心”自体に懐かしさを痛感していたのかもしれない…。


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