俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

通じ合う想い




「――芙美ちゃんの従弟くんは現役医大生なんだね」

久しぶりに未華子先生とお昼休憩の時間が一緒になったので職員食堂でランチを取っていた。話題は、病院での実習に苦戦中の私の従弟、陸くんだ。

先日、幸也さんに医学部時代のつらかったことを尋ねていたが、解剖学のホルマリンの臭いに耐えられなかったというエピソードでふたりは意気投合。初対面のときはギスギスしていて心配していたが、その話題をきっかけに距離が縮まった気がする。

それ以来、陸くんはよく我が家を訪れるようになり、医者の先輩でもある幸也さんに悩み相談に乗ってもらっていた。

「でも、おかしいわね。早瀬くん、解剖学のとき、つらそうな素振り少しもなかったわよ。ホルマリンの臭いも平気そうだったけど」
「そうなんですか?」
「ええ」

未華子先生が頷く。

「実習で使わせていただくご遺体は腐らないようにホルマリンに漬けて保存しているんだけど、その臭いがダメっていう学生は確かにいたわね。私も臭いが鼻にこびりついて、初めての解剖のあとはご飯食べられなかったから」

そんなに強烈な臭いなんだ。

「だけど早瀬くんはなんともなさそうだったわよ」

同じ医学部に通っていた未華子先生が言うのだから本当なのだろう。
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