俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

その話を聞いて、意外だと思ってしまった。

陸くんも言っていたけれど、幸也さんならば患者の死を前に悲しんだとしてもすぐに気持ちを切り替えることができるくらい強い人だと私も思っていたから。

「だから今、ちょっと心配なのよね」

未華子先生の表情が不意に曇る。目線を落として、小さく息を吐き出した。

「心配って、なにかあったんですか?」

話の流れを考えれば、おそらく幸也さん関係のことだろう。未華子先生が言いづらそうに口を開く。

「今日の午前中、早瀬くんの担当患者の容体が急変して亡くなったらしいの」
「えっ……」

ふと思い出したのは昨夜のこと。帰宅したばかりの幸也さんに緊急の呼び出しがあり、すぐに病院に戻っていった。もしかして関係があるのだろうか。

「郡司先生を執刀医にしたオペを受けた患者で、早瀬くんも助手に入っていたらしいの。かなり難しいオペだったらしいけど」
「でも、そのオペなら無事に成功したんですよね」

大きな問題もなく終了したと聞いている。それなのにどうして……。

「〝オペが成功したかどうかは患者が無事に退院しないとわからない〟早瀬くんの口癖よ」

未華子先生が力なく微笑む。

「大きな手術のあとには起こる可能性のあることなんだけど、数日前に合併症を起こしてしまったみたい。そのまま回復できなくて午前中に息を引き取ったそうよ」
「そんな……」

言葉をなくしてしまった。
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