俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

和解




自宅に戻ってからも先ほどの出来事が忘れられず、しばらくはソファにぼんやりと座っていた。

時計を見ると夜の八時を過ぎていて、さすがにそろそろ夕食の支度を始めようと腰を上げる。

その前になにげなくスマホを確認すると通知が一件あり、幸也さんからメッセージが届いていた。

急患が運ばれてきたので、その手術などの対応で帰りが遅くなる、もしくは病院に泊まるので夕食はいらないという連絡だ。

会話こそない私たちだけど、こういう連絡をしっかりとしてくれるのは幸也さんらしい。

急患という言葉にふと先ほどの男性を思い出す。救急車に乗る前に意識を取り戻して、心拍も再開したけれど、その後はどうなったのだろう。

気になりながらも夕食の支度をしてからひとりで食べて、シャワーを浴び終えると今日はもう寝ようと寝室に向かおうとした。

そのとき玄関の開く音が聞こえて幸也さんの帰宅を知らせる。

もうすぐ夜の十一時という時間だけれど、どうやら病院から帰宅することはできたらしい。

「おかえりなさい」

リビングに入ってきた幸也さんを迎えれば、外の暑さのせいで額にうっすらと汗を滲ませている彼が「ただいま」と少し疲れたような声で返事をした。

ソファに腰を下ろしたのを見て、このまま先に寝るのもためらわれたのでそっと近付いて声を掛ける。
< 148 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop