俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

強い味方




実家の客間に入ると、立派な掛け軸のかかった床の間を背に、父が腕組みをして座っていた。

テーブルを挟んだ対面の席に早瀬先生と並んで腰を下ろす。彼の服装は、見慣れた白衣姿ではなく、紺色の落ち着いた色味のスーツだ。

五月の大型連休初日の今日。旅行客や帰省客で賑わう東京駅から新幹線に乗り、北陸地方にある私の実家に結婚の挨拶に訪れている。

「きみが早瀬くんか」

父の言葉に早瀬先生がすっと頭を下げた。

「はい、早瀬幸也と申します。芙美さんと同じ郡司総合病院で医師をしており、専門は心臓血管外科です」
「芙美から事前に話は聞いている。そう固くならず、足を崩してくれてかまわない」

父は私のことを一切見ることなく、早瀬先生だけに視線を送っている。そのことに傷つきながらも、仕方がないと受け入れた。

やはり父は医者になれなかった私のことが嫌いなのだろう。

楽な姿勢で座るように言われた早瀬先生だけれど、姿勢良く正座を続けたまま手土産を父に手渡した。父の好物の羊羹だ。

そこへ家政婦の女性が三人分のお茶を持って現れる。十年以上前に母が亡くなってから家事などをしてくれている六十代の女性だ。

彼女は父から羊羹の入った箱を受け取ると、客間をあとにした。
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