俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

「私には四つ下の弟がいて、生まれつき重い心臓病を患っていました。助かるためには、当時は国内でもまだあまり症例数の少ない難しい手術が必要で、執刀医を探すのに両親が苦労していたのを覚えています」

初めて聞く話に耳を傾けながら、小児科病棟に入院しているこうたくんのことを早瀬先生が気に掛けていたことを思い出す。そしてその理由に気が付いた。

もしかすると彼は、心臓に病を抱えて手術を受けたこうたくんに弟さんの姿を重ねていたのかもしれない。

「弟はいくつかの病院で手術を断られましたが、たったひとりだけ手術ができると言ってくださった心臓血管外科医がいました。その方のおかげで手術は無事に成功し、弟は今も元気に暮らしています。私はその医師に憧れて、同じ道を歩むことを決意し、専門も父とは別の心臓血管外科を選びました」
「そうか。立派な理由だな」

早瀬先生の医者を志した理由に感銘を受けた父が深く頷いた。

「早瀬くんのことは芙美から聞いているが、アメリカに留学の経験があるそうだな」
「はい。四年ほどあちらに臨床留学を。やはり心臓を専門にするなら症例数の多いアメリカで学びたいと思いまして」
「そのあとは郡司総合病院に戻っているが、それは院長の郡司先生がいるからかな。あの方もきみのお父さんのように有名な医師だから」
「そうですね。郡司院長にはいろいろと学ぶことが多く、勉強になっています」
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