切れない縁
告白
水を一気に飲み干した井上さん。

「井上さん。大丈夫ですか?」

「うん。あのさ、さっきの話しがあったから言う訳ではない事をわかって欲しいんだけど…」

「?……あ…はい…??」何なんだろう?

「あのさ、谷口さん。谷口美波さん。俺と結婚を前提に付き合って欲しいんだ!」

「は?私ですか?」

「うん。君は入社したばかりだし春になったら告白しようと思っていたんだけど……さっきの安田さんの話しを聞いてモタモタしてたら転勤して会えなくなったり…君に告白するヤツが出てきたら困ると思ったんだ!

ふ〜。谷口美波さん君の笑顔や優しさ、素直さ本当に好きなんだ。どうか俺の嫁さんになってくれないか?」

「……は…あの…2、3日考えさせていただいても良いですか? 
けっ…こん…ですよね……」

「うん。良〜く考えて欲しい。
俺は結婚したら今以上に仕事頑張るから転勤する時は必ずついてきて欲しい。
離ればなれは寂しいからさ。」

「あの、もし、もしですよ?来年の春に転勤になったら私は会社を辞めるって事ですよね」

「うん。もし来春に転勤なら年明けくらいに所長から話しが出ると思うけど、たぶん来年は無いと思う」

喫茶店のマスターは絶妙なタイミングでコーヒーを出してくれた。

ズズズっとコーヒーを飲んで、私もふ〜っと深呼吸した。

井上さんも黙ってコーヒーを飲んでいる。

そのまま無言で喫茶店を出た2人。
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