壊れるほどに愛さないで
「大丈、夫……私ね……」

雪斗は、私の瞳から涙を掬うと震える体を、だきしめた。

「何にも言わなくていいから……美織、まだ、寒いよな……寝室から毛布持ってきてもいい?」

顔を上げれば、雪斗は、私にスウェットを着せたせいでTシャツ姿だ。私との電話を切ってすぐに上着も着ずに、駆けつけてくれたんだろう。

「雪斗……風邪引いちゃう」

「俺、健康だけが取り柄だから、馬鹿は、風邪引かないしね」

私を安心させるように、ふっと笑うと、雪斗が、私を横抱きにした。

「雪斗っ……」

「美織こそ風邪引かせたくないから」

雪斗は、寝室の扉を開けると、私をそっと下ろして、すぐに毛布を巻きつけた。

「寒くない?」

「雪斗も……入って……寒いから」

「いや、でも」

「……お願い……」

私は、掌を、雪斗に差し出した。

「えと、じゃあ……お言葉に甘えて……」

雪斗は、私の手を取ると、隣にゴロンと寝転んで、私と一緒に毛布を被った。雪斗の匂いと体温を感じる毛布と一緒に包まれて、身体の震えは、ようやく少しずつ収まっていく。

「添い寝して……俺が……美織の寝袋になれたらいいんだけど」

雪斗が、私の背中を抱き寄せ、私も、雪斗の背中に手を回した。

「雪斗……あったかい」 

「俺もあったかいよ」

そして、雪斗は、私の髪を漉くように何度も何度も優しく撫でてくれる。
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