壊れるほどに愛さないで
俺は早く美織に会いたくて、いつもは停めることのない病院の駐車場に営業車を停めた。

(お見舞い……だし、いいよな) 

エントランスに入ると、受付で面会希望の書類を記入し、すぐにエレベーターで三階に上がる。

(えっと、談話室は、確か)

エレベーター前で天井の案内板を見上げると、俺は突き当たりを左手に曲がる。

談話室が見えてきたところで見慣れた顔が首を捻っている。俺は嫌な予感がして、慌ててその人物に駆け寄った。

「勇気さんっ!」

赤髪がこちらを振り返ると、いつものように歯を見せて笑った。

「おお、雪斗!」 

「此処で何してんすか?」

談話室をちらりと見るが誰もいない。

「あぁ、親父が、ぎっくり腰でさ、ヘルニアもあるから、一応検査兼ねて入院しててさー。お見舞いの帰りだよ」

「そうなんすね、すみません、此処で美織見ませんでしたか?」

すぐに困った顔をしながら勇気が、頭を掻いた。

「あぁ、さっき此処であったんだけどさ。なんか美織ちゃん、俺見てビクビクしててさ。声かけたら、尻もちついちゃって……手を貸そうとしたんだけど、思いっきり手跳ねのけられてさー……。俺、そんな嫌われるようなことしたか?」

(そうじゃない、勇気さんは悪くない)
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