六月の月に愛を誓う。
5.溢れ出す思い出の箱
六月に入り、絢斗のことなんてすっかり頭から抜け落ちていた。

学校でも構わずくっついてくる律希にまだ慣れない私はそれだけで頭がいっぱいで、だけど幸せな毎日を過ごしていた。


「あ、いた!今日は先輩たち、ここでご飯食べてたんですね」


お弁当に入っていたハンバーグをあーんしてくれと律希にせがまれて、仕方なく恥ずかしい気持ちに耐えながら律希にハンバーグを差し出していると、沙耶ちゃんが階段を上がって屋上前にやってきた。


「げ、沙耶…」

「げ、ってひどいなー。別に律希に用はないし」


なぜか私の隣にぴったりと腰掛けてきた沙耶ちゃんがにこっと可愛らしく微笑んできた。


「先輩、このまえ言ってた新しくできたカフェ、いつ行きますか?私はいつでも空いてるので今日にでも行けますよ」

「え?あー私も暇だからいつでも大丈夫だけど…」


体育祭の日から、なぜか沙耶ちゃんは私に懐いてくれている。

律希と一緒にいると何度も間に入ってきたり、今日みたいに何回かお昼も一緒に食べたりと、最初は律希がいるからアプローチも兼ねて近づいてきているのだと思っていたら、律希がいなくても私の教室にやってきたり一緒に帰りたいと誘ってくれたりとなぜか私を慕ってくれているようだった。

どちらかと言えば嫌われているかと思っていたのに、あまりの態度の変わりようにいまだに戸惑っている。


「まじで美緒先輩、沙耶に何言ったの?体育祭の日からめっちゃ美緒先輩にべったりで俺嫉妬しそうなんですけど」
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