恋の神様がくれた飴



山下えり二十六歳


小中高大学と年齢と同じだけ彼氏のいない歴を更新し

二十五歳でやっと出来た彼は手も繋いでくれない草食系
それでも、奥手な私には距離感がちょうど良かった

プロポーズは受けてないけれど
お互いに結婚をそれなりに意識していたと思う・・・たぶん

一年も付き合ったのに
養子の話が出た途端
『俺、長男だから』って
あっさりフラれた

・・・そんなのってある?

それもこれも八つ下の妹、みよの所為だと思う





小学一年生のクリスマスに念願だった[お姉ちゃん]になれると知った

嬉しくて嬉しくて、調子の悪い母の邪魔にならないようにお手伝いを頑張った

そうして二年生の七月に生まれたのは
小さな小さな妹

私と同じく両親から一文字ずつもらって
名前は{みよ}と名付けられた

妹に触れたくて、そばに居たいのに
小さなみよはミルクを少し飲んでは吐きだして、すぐに熱を出し

ちっとも抱かせてもらえなかった

母の役に立ちたいのに
両親の口から出るのは決まって

『えりはお姉ちゃんなんだから・・』

口には出さないまでも我慢しなさいって無言の圧力ばかり

両親の両手はいとも簡単に
みよに取られてしまった

八歳の私より小さな妹は
どこに行っても可愛がられ

いつも抱っこされ
いつしか・・・そう、疎外感

唯一両親の注目を浴びるのは学校の成績で

その時ばかりは誉めてもらえたから、ひたすら勉強もした

やがて母と同じ誠愛女学院を受験し入学も果たした
そのままエスカレーター式で大学まで進学

みよとは着かず離れずの距離を保ちながら
優しいお姉ちゃんになれた、はず

みよの成長とともにヤキモチさえ
段々薄れた二十歳の頃

みよが突然の家出をした

父の妹の祥子叔母さんの家から帰ってこない
母に問いただすと父の浮気疑惑で大喧嘩をし

『あなたに似たみよの顔を見てるとイライラする』

口走ってしまったという

それを運悪く
みよに聞かれてしまった


「・・・っ」


全身が総毛立った気がした

両親の愛情を一身に受けていた妹が
たった十二歳で母親に拒絶された

誠愛の受験もせず地元の中学に通い始めたみよは
地元の不良と連み益々手が着けられなくなった

家族から表情が消え家は毎日重い雰囲気

私も構って欲しい歳を過ぎたことで
何かと気にかけられる生活を
負担に感じるようになった



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