恋の神様がくれた飴


聖愛の三学期は選択登校になる
それを見計らって父はみよを誘った

それに渋々応じたみよだったけれど

会社に来るたび父の機嫌がもの凄く良いから気にも留めてなかったのに

どうやら車をお強請りしたらしい


「えり、今日はMYマンションの立ち会いに土居と行って、帰りに図面の青焼きも頼む」

朝一番に父から聞いた仕事は
みよの名前のつくマンションの退去立ち会いだった


「土居!途中コーヒー屋に寄るから後十分で支度ね」

別に怒ってる訳じゃなくて

四つも下って思うだけで
トロい気がするのは私の偏見

土居の運転でドライブスルーに立ち寄る
コーヒーを注文すると支払いは私の携帯電話を出した

コーヒーを渡してくれた土居は

「えりさん髪切ったんですね」


ハンドルを握りながらこちらをチラッと見た

元カレなら気付かない程度の変化に気付くなんて

「・・・っ、ほんの少し切っただけなのに」

余りに意外で心臓がトクンと跳ねる


「分かりますよ毎日見てるでしょ?」


「毎日見てるから気付かないんじゃないの?」


「そうですか?それじゃ無関心みたいですよね」


更に意外な返事に目を見開いた


「関心あるのは、みよだけでしょ?」


別にイヤミでもなくそう思ったのに


「なんでみよさん?」


少し声が怒って聞こえた


「だって土居はみよが好きなんでしよ?」


「・・・は?そんなこといつ言いました?
僕はみよさんのことは妹みたいな感じでしか接してないですよ?」


チラリと盗み見た運転席の土居は
眉根を寄せて明らかに怒っている

シマッタとは思ったけれど

「あ、そう」

そんなことどうでもいい風に流してみた


「えりさんの髪。可愛くなりましたねって言いたかっただけなのに」


少し拗ねたような声にざわつく胸を
落ち着かせるために


「揶揄ってんの?四つも年上のオバサンだよ?可愛いってなによ」


捻くれさせたら二十六歳は怖いぞ

そう言わんばかりに言葉を並べた

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