陰黒のプシュケ

いつもと違った睡魔

とにかくこの状態に陥った”穂里恵が、次に咄嗟でごく自然と思考に及んだこと…。
それは、目覚める前の記憶…、であった。

そう…、当該記憶はすぐに彼女の脳裏に舞い降りており、そこでのイメージが映写機のように映し出されていたのだ。
だが…。

”そうだよ…‼今晩はいつも通り、1階のリビングテーブルでお父さん抜きの夕食をとって、その後、急に猛烈な眠気に襲われたんだった…。それで、続き間になっている和室へ転がるように横になって、そのままうとうとしちゃって…”

ここまでスムーズに思い出せた穂里恵のアタマにふと、よぎったもの…。

”あの時の睡魔はちょっとヘンな感じだった…。いつもと違ってた…”

このいつもと違う変な感じとは、眠りに入る過程に帰結した。

もはや穂里恵の脳裏には、夕食直後、睡魔に呑み込まれるまでの一部始終が明瞭にフラッシュバックされるのだった。


***


夜の夕食はミートグラタンとたらもサラダだった。
このコンビメニューは穂里恵のお気に入りであると同時に、彼女の母親、絵里の十八番の一つでもあった。

父の実樹雄は仕事柄、通常は帰宅が夜遅いため、家族全員での夕食は土日だけというのが慣例で、この夜も双子の妹二人と母、そして穂里恵の4人でいつも通り、女だけで賑やかにテーブルを囲んでいたのだが…。

「あら…?穂里恵、どうしたのよ?さっきから大あくびばっかして」

「なんか、食べてたら急に眠くなってきっちゃって…。ちょっと和室で横になるわ」

「お姉ちゃん、まだグラタン残ってるよ」

「今日はいいや。芙美と美優にあげる」

「いいの?お姉ちゃんの好物なのに」

「うん、いいわ。ふわ~~、なんだ、この眠気は…。もうダメだ。…おやすみ」

ゴロン…。

穂里恵は座布団を手早に二つ手にとり、一つを枕、もう一つを両手で抱きながら、リビングを背にして4畳半の畳に体を横に投げ出すと、あくびを連発しながら両目をつぶった。

目を閉じた穂里恵はすぐにウトウト状態に入るのだが…。

”今思うと、あれ…、どこかいつもと違ってたよ…!”

そう…、あの後…!
彼女の耳にはいつもと変わらぬ3人の談笑が飛び込んでいたのだ。
たしかに…。




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