彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
地下鉄のホーム

世奈side

 運転手と目が合った。

 (まぶた)を固く閉じて、手のひらをギュッと握りしめる。

(あと一歩! あと一歩踏み出せば、楽になる! 苦しいこの世界と決別できる!!)

 ホームから足が離れ、身体が宙に浮く……。闇と一体化したレールに、ゆっくりと吸い込まれていく……。

(これで、終わり……。全てから開放される……。
 私は消える! 何もかも終わるんだ!)

 ギギギギギーーッ、ギギギーッ、ギギーッ!
 けたたましい金属音を轟かせながら、荒々しい鉄の塊が迫ってくる。

(恐いっ!)

 まだ、意識がある……。
 確か、自殺サイトには、飛び込むのと同時に意識はなくなり、一瞬でこの世から消えられると書いてあったのに……。このままでは、肉体を引き裂かれるという壮絶な苦痛を味わなければならない。

(早く、早く消えたい! 早く、楽になりたい!!)

 私の中の私が、泣き叫んでいる。

 それなのに……。まだ、意識がある。

(これは……、脳裏に映し出されているこの懐かしい映像は……)

 映画やドラマでよくある、最後の瞬間、自分の人生が走馬灯のように映し出されるというのは本当だったんだ。
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