彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜

世奈side

 婚礼の儀式を全て終え、王家専属の巫女達と共に春爛漫の庭園を歩いていた。
 
(気持ちいい……。ふんわりと温かい、最高の気候だ!)

 緊張から解き放たれ、そこに居る誰もが穏やかな表情で季節を感じている。
 色鮮やかな草花を揺らす風も、とても爽やかだ。

「スヨン!」

 あとから追ってきたマヤ様に声を掛けられ、巫女達が全員立ち止まる。

「スヨンは、このあと第三夫人のおられる南殿を訪ねるように」

「えっ、私がですか?」

(意味が分からない。王家専属の巫女ではなく、なぜ私なんだろう?)

「お前と話がしたいらしい」

 凛とした姿勢で説明するマヤ様の背後で、式の間ずっと第三夫人に付いていた年配の使用人が頭を下げている。

(やっぱり、第三夫人は本当の私を知っているのかもしれない……)

 そのやり取りを、コウが心配そうに見守っている……。
 怖いけれど、行くしかない。

「はい、マヤ様」

 そう応え、コウには大丈夫だという視線を送り、私は巫女達の集団から離れた。年配の使用人に導かれ、第三夫人の居る南殿に向かう……。
 
(ここは、新築?)

 脳をくすぐるような木の匂いが立ち込め、屋根や壁、廊下までもが、ツヤツヤと輝いている。先程の重みのある宮殿とはまた趣きの違う、真新しい宮殿の中へと入っていく。

「ヨナお嬢様! 先程の巫女が参りました」

 年配の使用人が声を掛けると、ドタバタと騒がしい音を立てながら目の前の戸が勢いよく開かれた。
 
(えっ?)

 おそらくは下着? と思われる白い衣装の第三夫人が、自ら戸に手を掛けている。

「ヨ、ヨナお嬢様、きちんとお着替えをお済ませ下さい」

 年配の使用人に注意され、第三夫人は自分の身なりに一瞬ハッとした。
 けれども、特に動じることもなく私を部屋の中へと導いている。

「皆さんは帰って下さい。お疲れ様でした」

 第三夫人の言葉に、控えている使用人達が唖然としている。私にとっては聞き慣れた、今となっては懐かしい言葉だ。
 
(私に合わせてるの?)

 使用人達には伝わらないらしく、今度は年配の使用人に「二人きりにしてほしい」と頼み込んでいる。
 
 二人きり……。

(私の素性が知れないよう、気遣ってくれているのだろうか? いったい、何者なのだろう?)

 第三夫人には、全てを打ち明けなければならないのかもしれないと思った。

 あっという間に使用人達が全員消え去り、年配の使用人も心配そうに下がっていった。

 静まり返った部屋に二人きり、緊張感が増していく……。
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