彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
タイムスリップ

美咲side

「お願いっ、ここから出してーっ」

 まるで白い霞が晴れていくかのように、まわりが見えてきた。

「えっ……」

 これは、天井? それとも、 壁? 前を向いているのか、上を向いているのか、どういう状態になっているのか訳が分からない。ホームに立っていたはずなのに……。

 気が付くと、異国の男と女達が心配そうに私を覗き込んでいた。
 どうやら、布団に横たわっているらしい。

「お嬢様! ヨナお嬢様!」

(えっ、私を呼んでるみたいだけど、ヨナって誰?)

 辺りを見渡してみた。
 朱色で統一された伝統的な家具、シルクのように肌触りの良いピンク色の布団。

(これって……)

 その人達を振りきって、一気に起き上がる。

(これって、これってもしかして!)

 一目散に窓らしきものに飛び付いて、扉を開けてみた。

(やっぱり……)

 この景色に見覚えがある。

 この人達が着てる衣装、この屋敷、この庭園。
 これは、まさに……。韓国時代劇で見たあの世界ではなかろうか。

 韓国ドラマにハマってたせい?

 さすがに見過ぎだったか。

 それとも……、ここが天国?

 目の前には、若葉色の草木が香る和風の庭園が広がっている。

(んっ?)

 その中央に立つ松に似た大木の前で、こちらに向かって誰かが手を振っている。

(えっ?)

 焦点を合わせてよく見てみる。

(えぇーっ!!)

 衣装は青い色に変わっているし、翼らしきものも見当たらないが、さきほど駅のホームに現れたイケメンだ。
 隣りには、護衛のような黒い衣装を着た男も居る。

(アイツ、なに呑気に……。ちゃっかり着替えまで済ませて!)

「ちょっと、そこのイケメン天使ヤロー! 待ってなさい! そこ動くんじゃないわよっ!」

 指を差して、声を張り上げる。
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