恋人たちの疵夏ーキヅナツー
果実たちの新たなる発熱/その4
ケイコ


私はありのまま話した

アキラは終始、黙って冷静に聞いてくれた

こんなバカな小娘のヨタ話を

...

もともと、私は”部外者”だった

高校行ってからは陸上部に入ってたし

結構、部活は夢中でやってたよ

ただ、あの亜咲さんは隣に住んでたからね

バイクの後ろにも、年中乗っかってたし

それこそ、小さい頃から姉妹みたいな間柄だった

”怪物”紅子さんとも、昵懇だった

新聞にも載ったあの”事件”以来、かわいがってもらって…

なにしろ、この二人と”特別”な関係だったから

やはり、必然があったんだろう

こういう状況に至ったのは…

...


1年前、麻衣は亜咲さんに代わりアタマになった

そして、あいつ、一気に”行動”に出た

麻衣にとって最大の障害だったのが、”赤い狂犬”荒子さんだった

合田荒子さんは南玉連合の特攻隊長で、麻衣を目の敵にしてた

同じく、”狂ってる”麻衣も、さすがに後ずさると見られてた

が、麻衣はあえてその荒子さんをターゲットにした

”勝負”に出たあの夜、なんと荒子さんを拉致しやがった

リンチされ右足をバットで折られた、といううわさが飛び交った

あの荒子さんが墜ちたんだったら、もうダメだって

他の幹部連中は、すっかり及び腰になっちゃって…

麻衣は相和会会長の”身内”だと、もっぱらの話だったし

事実上、麻衣の不戦勝だった

思うツボだった

結局、異を唱えて「火の玉川原」に乗り込んだのは私だけ

”部外者”の私が麻衣に立ち向かった

それは、ある譲れないこだわりがあったから

ただそれだけで、どっちがどうのとは別だった

川原では、もう勝利を疑ってなくて、”手薄”だったのが幸いした

それもあって、私は麻衣とタイマンに持ち込めた

それは自分でいうのもなんだが、死闘だったよ





< 25 / 64 >

この作品をシェア

pagetop