フェティシズム
フェティシズム
――最初はね。脚だったのですよ。
目の前の男はそう言って笑った。
否、「笑った」という表現は少し合わないかもしれない。
正確に言えば「ニヤけた」ように見えた。
まるで遠い昔の初恋の相手との淡い出来事を思い浮かべるかのように、数秒天井に向けた視線をこちらに戻し、ニヤけて言葉を吐いた。
――女性の脚のね、ラインをね。見ているだけで興奮するのですよ。特に脹脛のラインが好きでしてね。膝の裏からこう、緩やかなカーブを描いて膨れるでしょう? で、そこからまた足首に向かってカーブを描く。そのラインに、とても興奮するのですよ。分かりませんか?
お互いの間にある机に身を乗り出し、こちらを覗き込むようにして言った男は、身を引いて椅子に深く座り直し、どこともない場所に視線を遣ると「分からないかなあ、分からないのだろうなあ」と、ぶつぶつ繰り返す。