献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~




月日は流れ、私は丸の内に勤めるごく普通のOLとなっていた。

日野(ひの)愛莉、二十七歳。

目立ちたくないため地味にしたいところだが、丸の内オフィスでは地味すぎると浮いてしまうため、栗色の髪はゆるく巻き、服装も無難にシンプルだが流行りのものを選んで着ている。

周囲に溶け込んで、仕事にも真面目に取り組む人でいなければ、明るいオフィス内に怪物の影が見える気がした。

そんなのどこにもいないのに。


勤め先であるここは、調味料食品大手『株式会社ヨツバ』。
小袋に入ったふりかけなどを中心に扱う会社だ。

丸の内の本社と主要都市七ヶ所に点在する支社、工業地帯に多数ある工場を抱えており、私はその本社内の総務部に所属している。

本社と言えど、営業部や広告宣伝部、品質管理部などの組織より、総務部の規模は小さい。
今はデジタル化が進み、私たちは最低限の人数で決められた処理を行う仕事が主だった。

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