ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~

契約とは恐ろしいものですね?


「野暮ったいな」

内示がでて挨拶後にもらった副社長からの第一声がこれである。
文はむっとした。

(野暮ったいのを秘書に選んだのはそっちじゃない)

薄化粧に髪は一本にまとめリクルートスーツ。
センスがないのは自分でもわかっているが、準備する時間もお金もない。

「申し訳ありません。スーツはこれしか持っていないんです。来週までに用意しますので……」

土日は引き籠ってゆっくりする予定だったが、買い物にでかけないとダメそうだ。
他の秘書たちの美しいこと。

パンプスやバッグもブランドものなのに、嫌らしくなく控え目に見せるのは流石のセンスだ。

履きつぶしたぺたんこの自分のパンプスを見下ろして、その違いに今後が不安になった。

「いや、明日からついてもらうのにそれではさすがにまずい。今日中に準備してきて」

「え、今からですか?」

吾妻の指示に驚く。

「そう。出かけてきて」

「で、でも、あまり詳しくなくて、ちょっと皆さんのスタイリングを参考に勉強してからが……」

「七生を付けるから、一緒にいくといい」

「はい⁉」

(なんで間宮さん?)

吾妻の横に控えて仕事をしていた七生も、顔をあげてこちらを見た。
鋭い視線に俯いて顔を隠す。
偏見かもしれないが、頭の回転が良い人間は苦手だ。

しゃべるだけですごく気を遣うから嫌なのに、今後はこの七生とも、一緒に仕事をしていかないといけないのが憂鬱だった。

自分がおどおどしているのが悪いのか、どこにいても見張られている気がして、七生が怖いと感じていた。
< 33 / 132 >

この作品をシェア

pagetop