落ちこぼれ聖女ですが、王太子殿下のファーストキスは私がいただきます!【書籍化決定】

第4話 レッスンを始めましょう

 ガイゼル様と恋愛本を買いに行った、その日の午後。
 私はいよいよスタートするアーノルト殿下との恋のレッスンのために、王城の一室で準備を進めていた。

(まずは私のすべきことを復習しておこう。アーノルト殿下とリアナ様を一月以内にくっつけるためには……)

 しばらく考えてみたが、何のアイディアも浮かばない。そもそも私には、「殿下とリアナ様は幼馴染」という程度の情報しかないのだ。今日はまずお二人に関する情報収集から始めよう。

 お二人はいつ、どのように出会ったのか。
 一緒に遊んだ思い出の場所は。
 成人してからのお二人の関係は。

 机の上に山積みにされた恋愛本に囲まれて、私は今日アーノルト殿下にヒアリングすることをノートに書き留める。

 その時、私のいた部屋の扉がノックされる音が聞こえた。


「クローディア嬢、待たせてすまない」
「アーノルト殿下、ガイゼル様!」


 ガイゼル様を引き連れたアーノルト殿下が部屋に入って来た。今日の殿下は細マッチョの引き締まった体に、爽やかな白いシャツをラフに着こなしている。頭に黒く光る兜とのコントラストが実に個性的な装いだ。

 私は立ち上がって、聖女候補生だった時に学んだカーテシーでご挨拶をした。


「アーノルト殿下。今日からよろしくお願いします」
「クローディア嬢。君は貴族のマナーも身に付けているんだね。勉強熱心だ」
「お伝えしていなかったかもしれませんが、私は数年前まで王都の神殿で聖女候補生として学んでいたんです。マナーはその頃に一通り学びました」


 恋占いスキルしか発現しなかったから神殿への就職に失敗した……ということは、とりあえず今は言わないでおこう。
 これ以上詳しく聞かれないように視線をそらしていると、殿下のうしろに控えているガイゼル様と目が合った。私の下手くそなカーテシーを目の当たりにしたせいか、ガイゼル様は私に苦い顔を向けている。


「さあ、クローディア嬢。まずは何から恋愛を学べばよいだろうか」
「あ、殿下も私のことはディアとお呼びくださいね。まず具体的な話に移る前に、お二人の馴れ初めなどを教えて頂きたいのですが」


 殿下はにっこりと笑い、幼馴染であるリアナ様とのこれまでを語り始めた。
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