【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
階段を下りた先には破損部分をガムテープで補修したガラス扉があり、私たちはそこから外へと出た。
ずっと暗闇の中にいたせいか、夕日が目に染みる。
まだ夜にもなっていなかったんだ。
よかった。このまま帰宅すれば志貴に心配をかけずにすむ。
ビルの周辺には複数台のバイクが停められていて、その中には怜央の愛車もあった。
けれど、彼は自分のバイクには見向きもせず、タクシーを止める。
「タクシーで帰るの?」
「ああ」
「バイクはどうするの?ここまでバイクで来たんだよね?」
「あいつらに任せる」
怜央はそう言うと、私の手を握ったままタクシーへと乗り込んだ。
私も引っ張られるような形で後に続く。
「☓☓町の〇〇マンションまでお願いします」
「はい、かしこまりました」
運転手さんは後方を確認した後、タクシーを走らせた。