罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~
15 怖すぎます
ローレルがこちらに向かってきたので、リナリアは廊下の端により、うつむいて顔を隠すように頭を下げた。
学園内では身分の差はそれほど重要視されていないが、この国の王子が歩いてきたのだから、これくらいの態度をしてもおかしくはない。
本当ならこの場から今すぐ走って逃げだしたい気分だったが、ローレルの後ろには護衛と思われる大柄な男子生徒がつき従っていた。怪しい動きをすると、護衛に怪しまれてしまうかもしれない。
リナリアがローレルの足元だけを見て通り過ぎるのを静かに待っていると、ローレルの足はリナリアの前で止まった。
「リナリア=オルウェン」
急に名前を呼ばれたので驚いてつい顔を上げてしまう。顔を上げた先には、シオンとよく似た顔のローレルがいた。
「久しぶりだね、リナリア。私のことを覚えているかな?」
「……もちろんです、殿下」
リナリアが視線をそらしながら答えると、ローレルは勢いよく壁に右手を叩きつけた。耳元でバンッと大きな音がしてリナリアは小さく悲鳴をあげながら恐怖で目を瞑る。
「リナリア」
目を瞑るとよく分かるが、ローレルとシオンの声はそっくりだった。ただ、シオンとは違いローレルの言葉には温かさが少しもない。
「私を見て?」
リナリアが恐る恐る目を開くと、ローレルの顔がすぐ近くにあった。
「え?」
なぜかローレルに壁際に追いやられ、至近距離から見下ろされている。
「リナリア、顔色が悪いよ。こんなに震えてどうしたの?」
ローレルはリナリアの髪を優しく撫でながら耳元で囁いた。
「ねぇ、もしかしてと思ったけど、リナリアは、私たち二人の王子をまだ見分けることができるのかな? そうだったら困るなぁ」
少しも困っていなさそうなローレルに、ニコリと笑顔を向けられたが、その貼り付けたような冷たい笑みに全身が震える。
「リナリア、私が誰だか言ってみて?」
目の前の人がローレルだと分かりきっていたが、『見分けがつくと困る』と言われたので、リナリアは、わざとローレルのネクタイを見てから「……シオン殿下、ですよね?」と小声で答えた。
ローレルは「ふーん?」と言いながら口端を上げ、急に興味を無くしたようにパッとリナリアから離れた。
「まぁ、どうでもいっか。私の周りで身内がコソコソと何かしているみたいだから、これから面白いことがおこるのかもって期待しているんだけど。リナリアもそれに関係があるのかな? 何が起こるのか楽しみだなぁ。頑張って私を楽しませてね」
励ますようにリナリアの肩を軽く二回叩いてから、ローレルは去って行った。そのあとを護衛の男子生徒があくびをしながらついていく。
リナリアの目の前を通り過ぎた大柄の護衛は、肩まで髪を伸ばしているのに整えておらず、とてもやる気がなさそうに見えた。護衛の男子生徒は、ネクタイを外していたので学年は分からなかった。同じ王子の護衛でも、真面目そうなゼダとは大違いだ。
ローレルと護衛の後ろ姿が完全に見えなくなってから、リナリアは深く息を吐いた。
(なにあれ……怖すぎ)
久しぶりに近くで見たローレルは、子どものころに会ったローレルよりさらに危険な雰囲気をまとっている。
(ローレルは『身内がコソコソ』って言っていたけど、もしかしてシオン殿下が何かしようとしているの? 私とシオン殿下で悪評をなくそうと決めたのは、ついさっき話したばかりだからさすがにバレていないよね?)
リナリアは、シオンの悪評をなくそうとすることは、あのローレルに敵対することになるのだと改めて気がついた。
(すごく怖い……けど、シオン殿下のためだもの! やらないという選択肢はないわ!)
リナリアは、未だに震えている両手を強く握りしめた。
学園内では身分の差はそれほど重要視されていないが、この国の王子が歩いてきたのだから、これくらいの態度をしてもおかしくはない。
本当ならこの場から今すぐ走って逃げだしたい気分だったが、ローレルの後ろには護衛と思われる大柄な男子生徒がつき従っていた。怪しい動きをすると、護衛に怪しまれてしまうかもしれない。
リナリアがローレルの足元だけを見て通り過ぎるのを静かに待っていると、ローレルの足はリナリアの前で止まった。
「リナリア=オルウェン」
急に名前を呼ばれたので驚いてつい顔を上げてしまう。顔を上げた先には、シオンとよく似た顔のローレルがいた。
「久しぶりだね、リナリア。私のことを覚えているかな?」
「……もちろんです、殿下」
リナリアが視線をそらしながら答えると、ローレルは勢いよく壁に右手を叩きつけた。耳元でバンッと大きな音がしてリナリアは小さく悲鳴をあげながら恐怖で目を瞑る。
「リナリア」
目を瞑るとよく分かるが、ローレルとシオンの声はそっくりだった。ただ、シオンとは違いローレルの言葉には温かさが少しもない。
「私を見て?」
リナリアが恐る恐る目を開くと、ローレルの顔がすぐ近くにあった。
「え?」
なぜかローレルに壁際に追いやられ、至近距離から見下ろされている。
「リナリア、顔色が悪いよ。こんなに震えてどうしたの?」
ローレルはリナリアの髪を優しく撫でながら耳元で囁いた。
「ねぇ、もしかしてと思ったけど、リナリアは、私たち二人の王子をまだ見分けることができるのかな? そうだったら困るなぁ」
少しも困っていなさそうなローレルに、ニコリと笑顔を向けられたが、その貼り付けたような冷たい笑みに全身が震える。
「リナリア、私が誰だか言ってみて?」
目の前の人がローレルだと分かりきっていたが、『見分けがつくと困る』と言われたので、リナリアは、わざとローレルのネクタイを見てから「……シオン殿下、ですよね?」と小声で答えた。
ローレルは「ふーん?」と言いながら口端を上げ、急に興味を無くしたようにパッとリナリアから離れた。
「まぁ、どうでもいっか。私の周りで身内がコソコソと何かしているみたいだから、これから面白いことがおこるのかもって期待しているんだけど。リナリアもそれに関係があるのかな? 何が起こるのか楽しみだなぁ。頑張って私を楽しませてね」
励ますようにリナリアの肩を軽く二回叩いてから、ローレルは去って行った。そのあとを護衛の男子生徒があくびをしながらついていく。
リナリアの目の前を通り過ぎた大柄の護衛は、肩まで髪を伸ばしているのに整えておらず、とてもやる気がなさそうに見えた。護衛の男子生徒は、ネクタイを外していたので学年は分からなかった。同じ王子の護衛でも、真面目そうなゼダとは大違いだ。
ローレルと護衛の後ろ姿が完全に見えなくなってから、リナリアは深く息を吐いた。
(なにあれ……怖すぎ)
久しぶりに近くで見たローレルは、子どものころに会ったローレルよりさらに危険な雰囲気をまとっている。
(ローレルは『身内がコソコソ』って言っていたけど、もしかしてシオン殿下が何かしようとしているの? 私とシオン殿下で悪評をなくそうと決めたのは、ついさっき話したばかりだからさすがにバレていないよね?)
リナリアは、シオンの悪評をなくそうとすることは、あのローレルに敵対することになるのだと改めて気がついた。
(すごく怖い……けど、シオン殿下のためだもの! やらないという選択肢はないわ!)
リナリアは、未だに震えている両手を強く握りしめた。