罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~
46 報告・連絡・相談は大事です②
リナリアの話を聞く母の顔はどんどんと険しくなり、恐ろしい形相に変わっていく。
「お、お母様。申し訳ありません……」
「リナリア、謝らないで。貴女に怒っているのではないの。私は、大切な我が子が苦しんでいるときに、助けてあげられなかった自分に怒っているの」
その言葉に、リナリアはハッとした。
両親に心配をかけたくなくて黙っていたが、結果としてそのことが大切な家族を傷つけてしまった。
(そうよね、私だってお父様やお母様がつらい時は、相談してほしいもの)
「お母様、黙っていてすみませんでした。今度、何か困ったことがあればすぐに相談します」
「そうしてね。貴女がしっかりしていることは知っているけど、せめて学生の間だけでも、私たちを頼って。守らせてちょうだい」
「はい……」
母は「無事でよかったわ」と言いながら優しく抱きしめてくれた。
「それで? 怪我はなかったの?」
「はい。シオン殿下が助けてくれましたから」
その言葉を聞いて母は深く長いため息をついた。
「そう、貴女に怪我がなくて良かったわ。シオン殿下に感謝しないとね」
母に抱きしめられていると、まるで小さな子どもに戻ってしまったかのように心が落ち着いた。
「それにしても、シオン殿下はウワサされているような愚かな方ではないようね。私たちオルウェンに連絡がなかったことは不満だけど、それ以外の対応はとても素晴らしいわ」
母は「今回、サジェスに押し倒された件では、事件を公《おおやけ》にすると、貴女までウワサの的になって何を言われるか分からないわ。だから、もし、リナリアが私たちに相談してくれていたら、シオン殿下と同じように内々にライラック伯爵家に抗議してサジェスを転校させていたでしょうね」と、シオンをほめてくれた。
「ただ、シオン殿下は、この件を私たちオルウェンに連絡しないことで、ライラックに恩を売った可能性が高いわ。何が目的なのかしら……」
母は「あっ」と呟いて「大丈夫よ。貴女たちが付き合うことに反対はしないわ。ただ、シオン殿下については、セリー商会経由で調べさせてもらうわね」
「はい」
貴族が婚約者を決める前に、相手の素行調査をすることは珍しいことではない。それに、調べてもらえれば、シオンが悪い人ではないと両親に証明することもできる。
「お母様、もう一つ相談させてください」
『今度はもう間違えない』とリナリアは母を見つめた。
「ローレル殿下のことです」
「第一王子の?」
「はい、実はシオン殿下の悪評を広めているのは、ローレル殿下なのです」
信じてもらえるか不安だったが、母は「まったくあの王室は、どうしてこうも問題がある王子を量産するのかしら?」と言ってあきれている。
「信じてくれるんですか?」
「え? ウソだったの?」
「いいえ、本当です!」
「そうよね。もちろん、貴女を信じるわ」
完璧と呼ばれるローレルを否定したのに、あっさりと信じてくれたことにリナリアの胸は熱くなった。
「お母様、私はシオン殿下の悪評をなくしたいんです。そして、ローレル殿下には、ご自身の行いを反省して二度とこんな酷いことをしないでほしいと思っています」
母に「貴女から見たローレル殿下は、どんな方なの?」と聞かれたので、リナリアは素直に「とても怖い方です」と答えた。
「子どものころに、ローレル殿下に『シオン殿下に近づくな』と、脅されたことがありますし、今は私が二人の殿下を見分けられることを知って、目をつけられてしまっています」
「危ないわね。でも、事件でも起きない限り、学園に親の私たちが押しかけるわけにもいかないし……。貴女に護衛をつけたいけど、学園内は王族しか護衛をつけられないものね。両殿下の護衛はとても優秀だと聞いているわ」
「両殿下の護衛は、天才剣士と呼ばれているゼダ様とギアム様です。ゼダ様はシオン殿下の味方になってくれました」
「もう一人は?」
「分かりません。どちらの味方でもないと思います。ギアム様は、いつも疲れていらっしゃるようで、学園内で寝ていることが多くて……」
「ふーん? なるほどね。じゃあ、そのギアムっていう護衛も味方にしたら、貴女の危険が減るわね」
リナリアは、いつもやる気のなさそうな大柄なギアムを思い浮かべた。
「仲間にできるでしょうか?」
「ひとつ、試してみたいことがあるんだけど……」
母の提案にリナリアは驚いた。
「ギアム様をセリー商会に勧誘するんですか?」
「そうよ、卒業後に雇うと約束するの。そのギアムって子が、いつも疲れているのなら、学生なのにたくさんの仕事を押し付けられているのかも。もし今の状態に不満があるのなら、こちらの話に乗ってくるかもしれない。裏のセリー商会なら、王族の護衛よりも高い賃金で雇うことだってできるわ。言ってみるだけならタダでしょう? 断られたらまた別の方法を考えましょう」
リナリアは「そっか、そうですね」とコクンとうなづいた。
「お、お母様。申し訳ありません……」
「リナリア、謝らないで。貴女に怒っているのではないの。私は、大切な我が子が苦しんでいるときに、助けてあげられなかった自分に怒っているの」
その言葉に、リナリアはハッとした。
両親に心配をかけたくなくて黙っていたが、結果としてそのことが大切な家族を傷つけてしまった。
(そうよね、私だってお父様やお母様がつらい時は、相談してほしいもの)
「お母様、黙っていてすみませんでした。今度、何か困ったことがあればすぐに相談します」
「そうしてね。貴女がしっかりしていることは知っているけど、せめて学生の間だけでも、私たちを頼って。守らせてちょうだい」
「はい……」
母は「無事でよかったわ」と言いながら優しく抱きしめてくれた。
「それで? 怪我はなかったの?」
「はい。シオン殿下が助けてくれましたから」
その言葉を聞いて母は深く長いため息をついた。
「そう、貴女に怪我がなくて良かったわ。シオン殿下に感謝しないとね」
母に抱きしめられていると、まるで小さな子どもに戻ってしまったかのように心が落ち着いた。
「それにしても、シオン殿下はウワサされているような愚かな方ではないようね。私たちオルウェンに連絡がなかったことは不満だけど、それ以外の対応はとても素晴らしいわ」
母は「今回、サジェスに押し倒された件では、事件を公《おおやけ》にすると、貴女までウワサの的になって何を言われるか分からないわ。だから、もし、リナリアが私たちに相談してくれていたら、シオン殿下と同じように内々にライラック伯爵家に抗議してサジェスを転校させていたでしょうね」と、シオンをほめてくれた。
「ただ、シオン殿下は、この件を私たちオルウェンに連絡しないことで、ライラックに恩を売った可能性が高いわ。何が目的なのかしら……」
母は「あっ」と呟いて「大丈夫よ。貴女たちが付き合うことに反対はしないわ。ただ、シオン殿下については、セリー商会経由で調べさせてもらうわね」
「はい」
貴族が婚約者を決める前に、相手の素行調査をすることは珍しいことではない。それに、調べてもらえれば、シオンが悪い人ではないと両親に証明することもできる。
「お母様、もう一つ相談させてください」
『今度はもう間違えない』とリナリアは母を見つめた。
「ローレル殿下のことです」
「第一王子の?」
「はい、実はシオン殿下の悪評を広めているのは、ローレル殿下なのです」
信じてもらえるか不安だったが、母は「まったくあの王室は、どうしてこうも問題がある王子を量産するのかしら?」と言ってあきれている。
「信じてくれるんですか?」
「え? ウソだったの?」
「いいえ、本当です!」
「そうよね。もちろん、貴女を信じるわ」
完璧と呼ばれるローレルを否定したのに、あっさりと信じてくれたことにリナリアの胸は熱くなった。
「お母様、私はシオン殿下の悪評をなくしたいんです。そして、ローレル殿下には、ご自身の行いを反省して二度とこんな酷いことをしないでほしいと思っています」
母に「貴女から見たローレル殿下は、どんな方なの?」と聞かれたので、リナリアは素直に「とても怖い方です」と答えた。
「子どものころに、ローレル殿下に『シオン殿下に近づくな』と、脅されたことがありますし、今は私が二人の殿下を見分けられることを知って、目をつけられてしまっています」
「危ないわね。でも、事件でも起きない限り、学園に親の私たちが押しかけるわけにもいかないし……。貴女に護衛をつけたいけど、学園内は王族しか護衛をつけられないものね。両殿下の護衛はとても優秀だと聞いているわ」
「両殿下の護衛は、天才剣士と呼ばれているゼダ様とギアム様です。ゼダ様はシオン殿下の味方になってくれました」
「もう一人は?」
「分かりません。どちらの味方でもないと思います。ギアム様は、いつも疲れていらっしゃるようで、学園内で寝ていることが多くて……」
「ふーん? なるほどね。じゃあ、そのギアムっていう護衛も味方にしたら、貴女の危険が減るわね」
リナリアは、いつもやる気のなさそうな大柄なギアムを思い浮かべた。
「仲間にできるでしょうか?」
「ひとつ、試してみたいことがあるんだけど……」
母の提案にリナリアは驚いた。
「ギアム様をセリー商会に勧誘するんですか?」
「そうよ、卒業後に雇うと約束するの。そのギアムって子が、いつも疲れているのなら、学生なのにたくさんの仕事を押し付けられているのかも。もし今の状態に不満があるのなら、こちらの話に乗ってくるかもしれない。裏のセリー商会なら、王族の護衛よりも高い賃金で雇うことだってできるわ。言ってみるだけならタダでしょう? 断られたらまた別の方法を考えましょう」
リナリアは「そっか、そうですね」とコクンとうなづいた。