復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
 いつも銀色の仮面をつけている彼の表情はわからない。その仮面姿が異様で、それも彼が忌み嫌われている原因のひとつ。

 仮面の下は醜いのだという噂は、いまや噂ではなく公然のことのようにささやかれている。

 さらには、その醜い素顔をやっかんで性格も荒々しく不愛想で無遠慮で不躾だとか。

 たしかに、それは観察しているだけでもわかるような気がする。

 彼は、琥珀色に変色した自分の上着を見おろしている。

 仮面に隠れて表情はわからない。だけど、すくなくとも将校服の上着の色の変化によろこんでいるわけではなさそう。

 そのとき、彼を見ているわたしの目と仮面の下の彼の目があった気がした。

 彼の口角が上がった? もしかして、笑っているの?

 が、彼は仮面ごとプイと視線をそらした。

 そして、彼は軍靴を踏み鳴らしながら大広間を去ってしまった。

 平謝りする執事長と侍女長とわたしは、そのうしろ姿にずっと頭を下げ続けなければならなかった。
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