復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
「わからないわ。わたしも反対したのよ。マキ・セルデンは、手違いで雇われた者。だから、何をしでかすかわからないと言ってね」
「はい? わたしって、そうなんですか? てっきり実力を買われたのか、と」

 運もあったのだろうけど、履歴を見た人事担当がこれまでの経験を買ってくれたと思っていた。

「数年前、将軍に何人もの侍女をつけたけれど、ことごとく辞めてしまったの。それ以降、彼は別宮にいるときは自分で自分のことをするか、従卒にやらせているかみたい」

 侍女長は、わたしの雇用時の決め手についてはどうでもいいみたい。

「だから、将軍から指名してくるのはめずらしいのよ。というよりかは、初めてのことなので驚いているわ」
「ちょちょちょ、ちょっと待って下さい。それって、あきらかこの前の仕返しをしてやろうという気が満々じゃないですか」
「まっ、それでも廊下磨きよりかはいいでしょう? 先程の宰相のこともあるし、ここにいない方がいいわ。だけど、正直先程のはスッキリしたわ。あの「毛がおもいっきり残念」な宰相の顔ったらもう。これで、しばらくは思い出しては笑うことが出来る。というわけでマキ、将軍の気がかわらない内に、彼のもとに行くこと。いいわね」

 侍女長は、真っ白に塗りたくって皺を隠している顔に満面の笑みを浮かべた。

 ピシピシ……。

 侍女長の化粧がひび割れるのを見ながら、自分の華麗なる転身に驚きを禁じ得なかった。
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