復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~

き、気まずすぎるわ

 ワゴンに近づきかけると、ウオーレンが「きみは、なにもしない方がいい。すぐに支度するから座っていてくれ」とやさしいことを言ってくれた。

「きみはなにもしなくていい」と言うべきところを、「なにもしない方がいい」だなんて、言葉がおかしかったけれど、そこはツッコまないでおいた。

 お言葉に甘えて椅子に座って待つまでもなく、支度は終わった。

 わたしの鼻は、どんな獣よりもすごいのね。

 ここに来た最初の夜にウオーレンが言ってくれたけれど、ほんとうにすごいわ。

 隠れた才能かしら。それとも、本来持っているスキルに覚醒したとか開花したのかしら。

 とにかく、朝食のメニューは鼻で嗅ぎ取ったものだった。パーフェクトすぎる。

 ウオーレンとわたしは、それらを無言で食した。

 これまで、女一匹気丈に生きてきた。人前で涙を流したりなどということはなかったし、泣き言や愚痴も言わなかった。だれかに弱いところを見せたくないし、悟られたくもない。だから、肉体的精神的にヤバいときでも笑顔でいた。周囲にそうとわからせなかった。

 レディだから、ときには気弱なところや頼りないところをみせるのもアリかもしれない。その方が効果的なときはたしかにある。

 だけど、そういう意味での「レディの武器」はふるいたくはない。
< 80 / 158 >

この作品をシェア

pagetop