復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~

侍女ですもの。お茶くらい淹れるわよ

 立派な侍女っぷりを発揮しようと張り切っていたのに、いきなりつまずいた。

 ここにきてからというもの、すべてウオーレンに任せっきりだった。茶葉がどこにあるのかがわからない。

「こんなところにあったわ」

 調理台の端の方に、袋が置いてある。しかも、二重にして口を結んでいる。苦労して結び目をほどき、中を見るとお茶の葉が入っていた。

「イヤね。鼻がズルズルだわ」

 泣きすぎたせいか風邪でもひきかけているのか、油断すると鼻水が垂れてくる。

 時期によっては、鼻水や涙が出るときがある。それは花粉とか埃とかによるアレルギー症状だけれど、これは違うみたい。

 シャツの袖でゴシゴシと鼻水を拭きつつ、袋から茶葉を取りだした。カンカンに沸いた湯をカップとポットに注ぎ、それらをあたためておく。ポットのお湯を捨ててから、そこに茶葉を放り込んだ。まっ、お茶の葉の量は適当でいいわよね。ウオーレンは口に入れば何でもいいというタイプだし、部下の人たちも似たり寄ったりでしょうから。
 わたしは、口には出さないけれどうるさい。だけど、これは飲まないからどうでもいい。

 お湯を注いでからふたをして蒸らす。

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