復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~

ちょっ、それ誤解だから

 宮殿が昔ながらの造りの為、執務室には控えの間がない。この扉を開けると、すぐ目の前に彼らがいる。

 わたし、いったいどうする?

 たったいま執務室にきたばかりで、室内での会話はいっさい盗み聞き、ではなく「廊下まできこえてきていないので、まったくきいていません」という感じを装い、しれっとお茶を出す?

 それとも、「これがわたしよ。思う存分見なさい」ってアピールしてみる?

 わたしって、バカ?

 それって、どちらもウオーレンの婚約者であること前提の話だわ。

 ダメダメ。そんなこと、ぜったいにありえない。いろいろな意味で、終わってしまう。

 だとすれば、選択肢はひとつしかない。

 この扉をおもいっきり開け、「ウオーレン様の婚約者ですって? 違うにきまっているでしょ」と宣言し、ウオーレンにお茶をぶっかけるのよ。

 これしかないわよね。

 思い立ったら即行動よ。

 ノブを握る手に力をこめ、扉を思いっきり開けた。
< 92 / 158 >

この作品をシェア

pagetop