期限付きの政略結婚 〜過保護な副社長とかりそめ妻のすれ違い恋愛事情〜
今日から九月。ハワイから帰ってきて丸ひと月が経った。

斗真さんはハワイでの仕事が予定よりも長引いたようで、現在やっと最後の目的地であるタイにいるようだ。

「斗真さん、いつ帰ってくるの?」

仕事帰りに寄ったファミレスで、亜矢が私に問いかける。

「まだわかんない。本社での仕事だってあるから、そろそろ帰ってくるんじゃないかなと思うんだけど」

彼女はまだ斗真さんと一緒にいるんだろうか。

斗真さんは私を抱いてくれたように、彼女のことも抱いているんだろうか。

ああ、また卑猥な想像を。

大きなため息をついて頭を垂れる。

「ハワイなんか行かなきゃよかったな」

「まあ逃げ帰ってきちゃったのはよくなかったと思うけどさ」

亜矢には帰国してから事情を打ち明けたけど、『やるじゃない!このまま斗真さんを彼女から奪っちゃいなよ!』と過激なことを言われた。

だけど、そんなに前向きでアグレッシブな考え方ができるはずもない。

帰ってきたところでどう顔を合わせればいいのかもわからない。

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