春風、漫ろに舞う
「ねえ、藤雅…?」


「ん?」



目が覚めちゃったみたいで。
藤雅は、わたしを抱きしめながら髪を弄んでいた。


だからなのか。
安心して、ちょっと眠くなってきた。
だけど決めたから、伝えておきたい。



「言ってた海、一緒に行こうかと思う。」


「…大丈夫なのか?無理してるだろ。」


「確かにちょっとしんどい気持ちはあるけど、藤雅の家族とも仲良くしておきたいから。」


「…ありがとな。
俺が傍にいるから、安心してくれ。」


「そうしてくれると嬉しい。」



藤雅に自分から抱き着いて。
わたしは目を瞑った。



その夜、またわたしは夢を見た。


わたしに伸びてくる黒い影は、わたしを蝕んでいくんだ。
そして、わたしは言うの。


「お願い。許して」


わたしのその言葉を聞いた黒い影は。
楽しそうに笑ってくる。


嘲笑でもなく、本当に楽しそうに。
愉快に笑っていた。
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