春風、漫ろに舞う

アフェランドラ 十葵side

「お二人は?」


「あそこ。」



蒼樹に聞かれて、テラスの方にいる藤雅たちを見る。


仲睦まじく、二人で笑いあって。
藤雅は、俺たちには見せたこともないような笑顔を浮かべている。

若頭として小さい頃から、普通の子どもでいたら見ることもないような事ばかり目にしてきたから。
いつの間にか、年齢にはそぐわない冷静さや考え方をするようになってた。
それは、ずっと昔から隣で見てきたからこそ俺が一番分かってる。


それなのに、今は。
一条組若頭ではなく、一人の男として愛する女性との時を過ごしてる。
それを邪魔したくはない。
前に藤雅が俺に零した一言
「芽来の傍にいる時だけが、唯一普通の男になれる」
それの意味を今やっと、改めて理解した。

藤雅は、芽来ちゃんといるときは必要以上に俺たちですら寄せ付けない。
なにかあったらどうするんだ、と言ったこともあったけど。
肩書も全部なくした、一人の男として接していたんだ。
それに。
もしものときは、藤雅が命をかけてでも守るという裏返しの言葉でもあると分かったときは、男として惚れなおした。

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